米国での推定妊娠率

論文紹介

米国での推定妊娠率

タイトル:
1.Estimated pregnancy rates for the United States, 1990-2000: an update
2.Estimated pregnancy rates for the United States, 1990-2005: an update
3.Estimated pregnancy rates and rates of pregnancy outcomes for the United States, 1990-2008
著者:
1.Stephanie J Ventura 1, Joyce C Abma, William D Mosher, Stanley Henshaw
2.Stephanie J Ventura 1, Joyce C Abma, William D Mosher, Stanley K Henshaw
3.Stephanie J Ventura 1, Sally C Curtin, Joyce C Abma, Stanley K Henshaw
所属:
Center for Disease control and Prevention, Natinal Center for Health Statistics, National Vital Statistics System, Division of Vital Statistics, Hyattsville, MD 20782, USA.
出版:
1.Natl Vital Stat Rep . 2004 Jun 15;52(23):1-9.,
2.Natl Vital Stat Rep . 2009 Oct 14;58(4):1-14.,
3.Natl Vital Stat Rep . 2012 Jun 20;60(7):1-21.
PMID: 15224964
PMID: 20121003
PMID: 22970648
論文元URL:
1.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15224964/
2.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20121003/
3.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22970648/

≪論文紹介≫

全国人口動態統計報告

全国人口動態統計報告(NVSR)は、出生、死亡、結婚、離婚の暫定的な統計をカバーする全国人口動態統計システム(NVSS)からの定期刊行物です。報告書は、前年の出生に関する最終データをカバーし、特別なトピックの分析が随時発行されます。今回ご紹介する報告書は、Stephanie J Ventura氏らが1976年以来続いている全米の妊娠率シリーズを更新し、1990年から2008年までの詳細な妊娠率を示した報告しまとめたものです。

背景

本報告書は、米国の44歳までの女性の2008年までの妊娠率を示している。2001-2008年の妊娠率はすべて、2000年と2010年の国勢調査に基づく人口間推定値を用いている。2000-2005年の妊娠率および胎児死亡率は、主として米国疾病対策予防センター(CDC)の国立保健統計センター(NCHS)が実施した1995年、2002年および2006-2010年の全米家族成長調査(NSFG)から収集した妊娠歴情報を用いて改訂されたものである。妊娠の結果(生児出産、人工妊娠中絶、胎児死亡)、年齢、人種、ヒスパニック系、婚姻状況別の割合が示されている。

方法

生児出生に関する統計は、全米人口動態統計システムの人口動態統計協力プログラムを通じて各州からNCHSに提供された完全な出生数に基づいている。

人工妊娠中絶の推定値は、CDCの国立慢性疾患予防・健康増進センター(NCCDPHP)がほとんどの州から収集した中絶監視情報に基づいており、これらの推定値はガットマッカー研究所によって全国合計に調整されている。

NCCDPHPは、45州、ニューヨーク市、コロンビア特別区から2008年に報告された情報に基づいて、年齢、人種、ヒスパニック系、配偶者の有無など、中絶を受ける女性の特徴に関する情報を収集している。

結果1

2008年に終了した妊娠は推定6,578,000件で、最近最も少なかった2002年(6,347,000件)より4%増加したが、歴史的ピークである1990年(6,786,000件)より3%少なかった。2012年6月20日 3 2008年の合計には、424万8000件の生児出生、121万2000件の人工妊娠中絶、111万8000件の胎児喪失が含まれる。2008年の推定妊娠率は、15-44歳の女性1000人当たり105.5人で、1990年のピーク(115.8人)を約9%下回った(下表)

  妊娠率 妊娠率  
合計 出生 流産 胎児死亡 合計 出生 流産 胎児死亡 年齢
  単位:千人 千分率14-44才の女性 単位:千人
2008 6,578 4,248 1,212 1,118 105.5 68.1 19.4 17.9 62,360
2007 6,663 4,316 1,210 1,137 107.0 69.3 19.4 18.2 62,292
2006 6,632 4,266 1,242 1,124 106.6 68.6 20.0 18.1 62,190
2005 6,435 4,138 1,206 1,091 103.7 66.7 19.4 17.6 62,071
2004 6,450 4,112 1,222 1,090 104.1 66.4 19.7 17.6 61,969
2003 6,415 4,090 1,250 1,075 103.7 66.1 20.2 17.4 61,888
2002 6,347 4,022 1,269 1,056 102.6 65.0 20.5 17.1 61,856
2001 6,374 4,026 1,291 1,057 103.1 65.1 20.9 17.1 61,795
2000 6,438 4,059 1,313 1,066 104.5 65.9 21.3 17.3 61,577
1999 6,286 3,959 1,315 1,011 102.2 64.4 21.4 16.5 61,475
1998 6,266 3,942 1,319 1,006 102.2 64.3 21.5 16.4 61,326
1997 6,205 3,881 1,335 989 101.6 63.6 21.9 16.2 61,041
1996 6,240 3,891 1,360 988 102.8 64.1 22.4 16.3 60,704
1995 6,245 3,900 1,359 986 103.5 64.6 22.5 16.3 60,368
1994 6,370 3,953 1,423 994 106.1 65.9 23.7 16.6 60,020
1993 6,494 4,000 1,495 999 108.8 67.0 25.0 16.7 59,712
1992 6,603 4,065 1,529 1,009 111.1 68.4 25.7 17.0 59,417
1991 6,682 4,111 1,557 1,014 112.7 69.3 26.2 17.1 59,305
1990 6,786 4,158 1,609 1,019 115.8 70.9 27.4 17.4 58,619
1989 6,527 4,041 1,567 919 111.8 69.2 26.8 15.7 58,367
1988 6,393 3,910 1,591 893 110.0 67.3 27.4 15.4 58,120
1987 6,183 3,809 1,559 815 106.8 65.8 26.9 14.1 57,901
1986 6,129 3,757 1,574 798 106.7 65.4 27.4 13.9 57,430
1985 6,144 3,761 1,589 795 108.3 66.3 28.0 14.0 56,716
1984 6,019 3,669 1,577 773 107.4 65.5 28.1 13.8 56,031
1983 5,977 3,639 1,575 763 108.0 65.7 28.5 13.8 55,359
1982 6,024 3,681 1,574 769 110.1 67.3 28.8 14.1 54,700
1981 5,958 3,629 1,577 751 110.5 67.3 29.3 13.9 53,926
1980 5,912 3,612 1,554 746 111.9 68.4 29.4 14.1 52,833
1979 5,714 3,494 1,498 722 109.9 67.2 28.8 13.9 52,016
1978 5,433 3,333 1,410 690 106.7 65.5 27.7 13.5 50,921
1977 5,331 3,327 1,317 687 107.0 66.8 26.4 13.8 49,814
1976 5,002 3,168 1,179 655 102.7 65.0 24.2 13.4 48,721

結果2

年齢、人種、ヒスパニック系によるパターン

* 2008年の妊娠率は25-29歳の女性が最も高く、1000人あたり167.9人であり、20-24歳の女性の1000人あたり163.0人が僅差でこれに続く。

*20代の女性の約6人に1人が2008年に妊娠している。

*10代(18-19歳)の妊娠率(114.2/1,000)は、30-34歳の女性(141.2)より19%低く、30-34歳の女性よりわずかに高かった2000年から逆転している。

*2008年の10代(15〜17歳)の妊娠率は1,000人あたり39.5人、35〜39歳の女性の妊娠率は78.5人であった。+ 本報告書の最高齢者である40-44歳の女性の2008年の妊娠率は1,000人あたり18.8人であり、1991年以来着実に上昇している。

図1

結果3

1990年から2008年にかけて、10代の妊娠率は低下している。最も若い10代の妊娠率は、2008年には10-14歳の1,000人あたり1.4人となり、これまでで最も低い値となった。

5-17歳では1990年(1,000人あたり77.1人)から2008年(39.5人)へとほぼ半減している。10代以上の年齢層では、1990年の18-19歳の1,000人あたり167.7人から114.2人と、この期間に約3分の1に減少している。妊娠率の全体的な傾向は、15〜19歳を合わせても同じで、2005年から2006年にかけて両者とも好転している。0代の妊娠率の全体的な低下は、1990年から2008年にかけての生児と人工妊娠中絶の大幅な減少に反映されており、生児(33%)に比べて人工妊娠中絶(56%減)の減少幅が大きい。ただし、どちらも1回の性交あたりの妊娠率は20~30%程度と差はない。

図2

図3

結果4

1990年以降、妊娠率の合計はすべてのグループで低下しており、非ヒスパニック系白人女性の8%からヒスパニック系女性の12%、非ヒスパニック系黒人女性の17%まで低下している(左図)。婚姻状況別の妊娠率(右図) 2008年の既婚女性の妊娠率は1,000人あたり116.2人であり、未婚女性のそれは96.2人であった。これらの率は、いずれも1990年より低くなっている。一方既婚女性の1回あたりの妊娠率は、1990年代前半からほとんど変化していない。

図4

図5

まとめ

本報告書は、1990年から2008年までのアメリカにおける10-44歳までの女性の妊娠率を示したものである。妊娠の結果について、年齢層別、人種およびヒスパニック系出身者別、配偶者の有無別に推計値を示した。人種およびヒスパニック系出身者別、および妊娠の結果別の妊娠率の持続的な差は続いている。妊娠率に密接に関係する要因(性的活動,避妊具の使用,結婚,離婚,同棲のパターン)は,他の要因に影響される。これには、希望する家族規模、10代の妊娠と家族計画に焦点を当てた公的プログラムの影響、経済状況、医療と健康保険へのアクセスなどが含まれる。一方で性交一回あたりの妊娠率は20〜30%と人種およびヒスパニック系出身者で差がなかった。

2006年から2010年のNSFGのデータは、妊娠率の傾向や変動を説明するこれらの基本的な要因のいくつかを説明するために用いることができると、著者らはコメントをしている。

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