クラミジア・トラコマティスの感染歴のある女性とない女性の妊娠および妊娠までの期間について

論文紹介

クラミジア・トラコマティスの感染歴のある女性とない女性
の妊娠および妊娠までの期間について

タイトル:Pregnancies and Time to Pregnancy in Women With and Without a Previous Chlamydia trachomatis Infection
著者:JBernice M Hoenderboom, Jan E A M van Bergen, Nicole H T M Dukers-Muijrers, Hannelore M Götz, Christian J P A Hoebe, Henry J C de Vries, Ingrid V F van den Broek 1, Frank de Vries, Jolande A Land 2, Marianne A B van der Sande, Servaas A Morré, Birgit H B van Benthem 1
所属:
1:From the Epidemiology and Surveillance Unit, Centre for Infectious Disease Control, National Institute for Public Health and the Environment, Bilthoven.
2:Department of Genetics and Cell Biology, Research School GROW (School for Oncology and Developmental Biology), Faculty of Health, Medicine and Life Sciences, University of Maastricht, Maastricht.
出版:Matern Child Nutr. 2020 Jul;16(3):e12985. doi: 10.1111/mcn.12985. Epub 2020 Mar 24.
PMID: 32701764
DOI: 10.1097/OLQ.0000000000001247
論文元URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32701764/

クラミジア・トラコマティス感染症(クラミジア)は、女性の卵管因子不妊の原因となる。この関連性が妊娠女性の減少につながるかどうかを評価するために、オランダ・クラミジア・コホート研究(NECCST)に参加したクラミジア感染歴のある女性とない女性の妊娠発生率と妊娠までの期間を比較することを目的とした研究が行われました。

この研究内容が、2020年の11月にSexually Transmitted Diseasesに掲載されました。

≪論文紹介≫

背景

過去20年間の調査によると、オランダの16歳から34歳までの女性におけるクラミジア・トラコマティス(クラミジア)の感染率は3%と安定しています。クラミジアは骨盤内炎症性疾患の原因となり、その結果、激しく慢性的な炎症反応により卵管瘢痕が生じることがあります。クラミジア感染後、約1%の女性がTFIを発症すると推定されていて、クラミジア感染後にTFIを発症した女性は、妊娠するために体外受精(IVF)などの医学的支援が必要となります。しかし、年齢や不妊の原因などの決定要因により大きなばらつきがあるものの、体外受精後に生児を得ることができる確率は、3回の体外受精で平均約42%と推定されています。著者らは、クラミジア感染歴のある女性は、クラミジア感染歴のない女性に比べて妊娠率が低い、あるいは妊娠までの期間が長いという仮説を立てました。

クラミジア対策の大きな目的の一つは、早期の検査と感染症の治療により、不妊症などの合併症を防ぐことです。そのため、クラミジアによる不妊症だけでなく、感染後の不妊症にも注目することが重要です。この研究では、クラミジア感染歴のある女性とない女性の妊娠発生率と妊娠までの期間の違いを調査しました。期間は、女性が妊娠を試みた月数と定義し、性(リスク)行動、妊娠の意思、避妊の有無などの要因を含めました。

調査対象とデータ収集

オランダクラミジアコホート研究(NECCST)では、生殖年齢にあるオランダ人女性を2022年まで追跡調査しています。その調査データのうち、2008年から2011年にかけて、16歳から29歳までの女性が集団ベースのクラミジア・スクリーニング実施研究(CSI)に参加した女性のデータをもとに解析を行いました。

表1 参加者と感染状況 全体、 n (%) クラミジア陰性、n (%) クラミジア陽性、n (%)
全体 5704 (100.0) 3987 (69.9) 1717 (30.1)
クラミジアの状態
陰性 3987 (69.9) 3987 (100.0) 0 (0.0)
カテゴリー別陽性
自己申告 900 (15.8) 0 (0.0) 900 (52.4)
CSI-NAAT
(CSI研究におけるNAAT検査)
4 (0.1) 0 (0.0) 4 (0.2)
クラミジアIgG(抗体検査) 208 (3.7) 0 (0.0) 208 (12.1)
自己申告+ CSI-NAAT 244 (4.3) 0 (0.0) 244 (14.2)
自己申告+クラミジアIgG 263 (4.6) 0 (0.0) 263 (15.3)
CSI-NAAT +クラミジアIgG 1 (0.0) 0 (0.0) 1 (0.1)
すべて陽性 97 (1.7) 0 (0.0) 97 (5.7)
表2:臨床情報 全体、 n (%) クラミジア陰性、n (%) クラミジア陽性、n (%)
年齢(中央値) 32.4 32.5 32.1
移住の背景
欧米 4565 (80.0) 3354 (84.1) 1211 (70.5)
非西洋人 869 (15.2) 458 (11.5) 411 (23.9)
不明 270 (4.7) 175 (4.4) 95 (5.5)
教育水準
低/中 1163 (20.4) 648 (16.3) 515 (30.0)
高い 4539 (79.6) 3338 (83.7) 1201 (70.0)
性的デビュー時の年齢
<16 1558 (27.3) 956 (24.0) 602 (35.1)
16〜17 2178 (38.2) 1507 (37.8) 674 (30.8)
> 17 1968 (34.5) 1524 (38.2) 444 (25.9)
生涯のセックスパートナー(人数)
<6 1306 (22.9) 1077 (27.0) 229 (13.3)
6〜12 2174 (38.1) 1598 (40.1) 576 (33.6)
> 12 2224 (39.0) 1312 (32.9) 912 (53.1)
交際相手とのコンドームの使用
全くしない/あまりしない 340 (6.0) 242 (6.1) 98 (5.7)
時々 1807 (31.7) 1081 (27.2) 726 (42.3)
いつも/ほとんどの場合 2610 (45.9) 1876 (47.2) 734 (42.8)
交際相手がいない 936 (16.4) 779 (19.6) 157 (9.2)
淋病の陽性率 120 (2.1) 36 (0.9) 84 (4.9)
IUDの使用
一度もない 3507 (61.5) 2471 (62.0) 1036 (60.3)
1回以上 2197 (38.5) 1516 (38.0) 681 (39.7)
喫煙
一度もない 2260 (39.6) 1712 (42.9) 548 (31.9)
時々/過去に吸ったことがある 2919 (51.2) 1981 (49.7) 938 (54.6)
毎日 525 (9.2) 294 (7.4) 231 (13.5)
BMI
 <20 730 (12.8) 536 (13.5) 194 (11.3)
 20–<25 3448 (60.6) 2437 (61.2) 1011 (59.0)
 25–<30 1052 (18.5) 713 (17.9) 339 (19.8)
 ≥30 464 (8.2) 294 (7.4) 170 (9.9)

結果1:クラミジア陰性女性とクラミジア陽性女性の妊娠について

合計で5704人の女性が今回の研究に登録され、最初の妊娠時の平均年齢は29.4歳(95%CI、29.2~29.6歳)でした。

クラミジア陰性女性と
クラミジア陽性女性の妊娠について
全ての女性 クラミジア陰性の女性 クラミジア陽性の女性
女性 人数 % (95% CI) 人数 % (95% CI) 人数 % (95% CI)
妊娠したことも試みたこともない 2558 44.9 (44–46) 1821 44.7 (43.1–46.2) 737 45.3 (42.9–47.8)
妊娠を試みた、または試みたが妊娠に至らなかった 291 5.1 (4.5–5.7) 198 4.9 (4.2–5.6) 93 5.7 (4.6–7.0)
妊娠したことがある 2855 50.1 (48.7–51.4) 2058 50.5 (48.9–52.0) 797 49 (46.5–51.4)
計画的(少なくとも1回) 2051 71.8 (70.1–73.5) 1558 75.7 (73.8–77.5) 493 61.9 (58.4–65.2)
1000人年あたりの妊娠数 58.4 (56.7–60.0) 53.2 (51.5–55.0) 83 (78.5–87.9)

JBernice M Hoenderboom, et al 2020.を日本語に編集

結果2:妊娠の発生率

MUACと妊娠までの期間
MUACと妊娠までの期間

JBernice M Hoenderboom, et al 2020.を日本語に編集

登録された5704人の女性のうち、1717人(30.1%、95%信頼区間[CI]、28.9-31.3)の女性がクラミジア陽性であった。全体の妊娠率はクラミジア陽性女性とクラミジア陰性女性で同程度であった(49.0%[95%CI、46.5-51.4]対50.5%[95%CI、48.9-52.0])。1000人年あたりの妊娠率は、クラミジア陰性で53.2(95%CI、51.5-55.0)、クラミジア陽性で83.0(95%CI、78.5-87.9)であった。妊娠意向のある女性では、クラミジア陽性者の12%が妊娠までの期間が12ヵ月以上であったのに対し、クラミジア陰性者では8%であった(P<0.01)。

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