ヒト卵母細胞の排卵後の老化と胚の機能不全

論文紹介

ヒト卵母細胞の排卵後の老化と胚の機能不全

タイトル:Post-ovulatory ageing of the human oocyte and embryo failure
著者:A J Wilcox 1, C R Weinberg, D D Baird
出版:Human Reproduction, Volume 13, Issue 2, February 1998, Pages 394–397,
PMID:9557845
DOI: 10.1093/humrep/13.2.394
論文元URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9557845/

≪論文紹介≫

方法

妊孕性の問題での病歴を持たない、妊娠を計画していた221名の健常女性(21~42歳、平均30歳)を対象に、前向き研究を実施しました。研究期間中、女性は毎日尿検体を採取し、毎日性交の記録を残しました。

排卵および初期の妊娠損失は、後に尿中のヒト絨毛性ゴナドトロピンおよびステロイド代謝産物の免疫測定法によって確認されました。

これらのデータを用いて、卵母細胞の排卵後の老化に伴い初期の妊娠損失のリスクが高くなるかどうかを調査しました。

192例の妊娠は、受精前に卵母細胞が老化した可能性がある確率により順位付けされました。

結果

卵母細胞の老化の可能性が高まるにつれて、早期損失のリスクが統計的に有意な増加をしました(P > 0.05)。

臨床流産については、同様のリスクは観察されませんでした。

受精前の卵母細胞の排卵後の老化は、他の幾つかの哺乳類種に見られるように、ヒトでも妊娠初期の損失を引き起こす可能性があります。

表1.老化した卵母細胞の受精の結果として生じた可能性のある妊娠の、最低から最高確率で順位付けした、192例の妊娠での早期の妊娠損失

受精前に卵母細胞が老化した可能性がある確率により順位付けしました。

月経周期の妊娠可能日における性交のパターン

-5 -4 -3 -2 -1 排卵日 受胎 早期損失 早期損失率
O 105 25 24
X X 27 8 30
X O X 37 3 8
X O O X 9 4 44
X O O O X 8 4 50
X O O O O X 1 0 67
O O O O O X 5 4
合計 192 48 25

‘X’は性交、’0’は性交なし、’-‘は性交するかしないかのいずれかを示す。
早期損失のリスクについての傾向性検定(両側検定)。P = 0.049.

表2.排卵日に性交のなかった105例の妊娠における早期の妊娠損失について、受胎時において最も若い精子のコホートの年齢に基づいて順位付けしました。

表1のデータは、老化した精子も観測された関連性に寄与しているのではないかという疑問が提起されたため、その疑問を追求しました。

月経周期の妊娠可能日における性交のパターン

-5 -4 -3 -2 -1 排卵日 受胎 早期損失 早期損失率
X O 68 17 25
X O O 25 4 16
X O O O 5 2 40
X O O O O 6 1 29
X O O O O O 1 1
合計 105 25 24

‘X’は性交、’0’は性交なし、’-‘は性交するかしないかのいずれかを示す。
早期損失のリスクについての傾向性検定(両側検定)。P = 0.72.

→新鮮な精子による受精は欠陥のある受胎産物のリスクを増加させるという別の解釈の可能性?
生殖管内に精子が付着してから最初の1~2日で、欠陥のある精子が選択的に消失することで、欠陥のある受胎産物の可能性が減り、早期に損失するのではないかと推測した。

受胎率と排卵日に対する性交日

図1
全ての受胎に対して0.75を掛けた推定値(実線)と臨床妊娠のみからの推定値(破線)を示した、排卵に関連した特定の日の性交後の臨床妊娠率

→性交によって臨床妊娠を引き起こす可能性が最も高い日は、排卵日自体ではなく、排卵日の2日前である可能性

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