妊娠は予測可能:不妊カップルにおける自然妊娠の予測の大規模プロスペクティブ外部検証

論文紹介

妊娠は予測可能:不妊カップルにおける自然妊娠の予測の大規模プロスペクティブ外部検証

タイトル:Pregnancy is predictable: a large-scale prospective external validation of the prediction of spontaneous pregnancy in subfertile couples
著:JM Smeenk et al.  
出版:Hum Reprod (2007)
PMID: 16997935
DOI:10.1093/humrep/dem160
論文元URL:https://academic.oup.com/humrep/article/22/2/536/2939117

2006年の9月22日にオックスフォード大学出版局のHuman Reproductionに 掲載された、 JW van der Steeg 氏らが報告した研究内容を紹介します。
自然妊娠の確率を把握することは、受胎可能性の見通しが良く妊産婦管理のカウンセリングを受けるかどうかの選択につながる可能性がありますが、 JW van der Steeg 氏らは、自然妊娠の確率と開発された妊娠確率を計算するツールに関する研究を2006年に報告しました。

≪論文紹介≫

概要

オランダの38施設(産婦人科や大学病院など)で、これまで不妊症と診断されたことがない3021組の夫婦を対象とした、1年以内に自然継続妊娠が発生する確率の大規模な調査とそのデータを元にした妊娠予測を行うための画期的なツールの開発が行われました。

調査対象

2002年1月1日から2004年2月1日までの間に5591組のカップルが研究参加者として登録されました。
5591組のカップルに対して不妊歴、精液分析、ヒューナテスト、排卵の評価、欄干の評価からなる不妊検査行いました。
年齢は、妊娠した時点の年齢で算出し、研究時に40歳以上の女性は参加していませんでした。

女性の月経周期は規則的で、周期間の変動が8日未満である方を対象とし、周期が23~35日の間であれば規則的であると判断しました。
排卵の有無は、基礎体温(BBT)チャート、中黄体血清プロゲステロンまたは超音波による周期のモニタリングによって確認を行い、排卵障害、すなわち不規則な月経周期または無排卵の女性は研究対象から除かれました。
調査の結果、948組に男性に不妊因子があり、1622組が尿管病理を両側(311組)あるいは片側(1311組)に持っていたため、最終的に3021組のカップルを対象に研究が行われました。対象となったカップルの臨床情報を表1に示します。

対象となったカップルの臨床情報の表

調査を行ったカップルの不妊期間は夫婦が子供を希望してから、妊娠するまでの期間と定義しました。(夫婦が一度妊娠を経験したが出産に至らなかった場合の不妊期間は、その妊娠後に子供を希望した時から妊娠した期間までと定義されています。)

調査結果

参加した3021組のカップルに対してHunault氏らが2004年に開発した妊娠予測モデルを使って、1年以内に自然妊娠する確率を計算させました。
1917組のカップルでは、自然妊娠の推定確率が40%未満であったため、不妊治療の可能性に関してカウンセリングを行いました。最終的に、このグループの17%のカップルが不妊治療なしで自然妊娠をしました。1104組のカップルでは、自然妊娠の確率が40%であると予測されました。
12ヶ月後の全患者の追跡調査の結果、2741組のフォローアップを完了しました。
3021組のカップルのうち543組が1年以内に自然妊娠を継続し、そのうち10組が多胎妊娠でした。妊娠に失敗したカップルは57組で、そのうち53組が流産、4組が子宮外妊娠でした。825組のカップルは研究期間内に妊娠しませんでした。これらの結果から3000組を超える大規模な調査により12ヶ月の累積妊娠率は30%であると計算されました。

これらの研究データをもとにHunault氏らの妊娠予測モデルのキャリブレーションを行い、あらたに妊娠確率を計算するツールを開発しました。「http://www.freya.nl/probability.php」インターネット上で利用できるように公開されています。

この論文で報告されている正確な予測はここの患者さんのカウンセリングに使用することで、正当化し、このような正確なカウンセリングは、医師と患者の双方が不妊治療を開始するかどうかを知ることができるため、患者のケアを向上させることができます。

例えば、1年後に30%以下の自然妊娠確率であると算出された場合、生殖補助医療によって若干の妊娠確率が上がることが期待されます。もちろん妊娠に至らなかった場合の治療も考慮しなければなりません。

医師と患者で長所と短所を話し合って、エビデンスに基づいた共通の判断を下すそのサポートをするツールになることでしょう。

1年以内の妊娠状況

1年以内の妊娠状況グラフ1"
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1年以内の妊娠状況グラフ3

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