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妊活と不妊治療(妊活とは?)

妊活と不妊治療(不妊の原因と検査)

妊活とは?

妊活は、自己タイミング法やプレメントシリンジを使って、ふたりで妊娠にチャレンジすることをいいます。

基本的に、医療による手助けを受けないのが妊活ですが、最近では不妊治療を含めて妊活と考えることが広まってきています。

まずは妊活をはじめる前に、下記の8項目をチェックしましょう!

1.妊活はふたりで!

赤ちゃんは、ふたりのもとに生まれてきます。
女性だけが頑張れば赤ちゃんが授かるわけではありませんし、男性だけが頑張って赤ちゃんが授かるわけでもありません。

お互いが支え合って、寄り添いあって妊活をしましょう。

2.月経が順調にある?

月経が順調にあるということは、排卵があると考えられます。
基礎体温表をつけている人も多いと思いますが、排卵を境にして基礎体温が概ね2相性を描いていれば排卵が伴う月経周期である可能性が高いです。

月経が順調に起こらない、基礎体温が2相性にならない、低温期が長い場合には、何か排卵に問題があるのかもしれません。

また1年前に比べて月経周期が短くなってきた、長くなってきたなどの変化がある場合も注意しましょう。

3.年齢は?

妊娠しやすい時期は、20代〜30代前半です。
卵子の質の低下から女性だけの問題でしょ?といわれがちですが、実は精子の質も30代後半になると低下してくるといわれています。

4.妊活の期間は?

不妊症の定義は「避妊をしない生活を1年以上送っても妊娠しないこと」と日本産科婦人科学会から発表されていますが、これも30代前半を目安に考えたほうがいいでしょう。30代後半からは、半年ほどふたりで頑張ってみても妊娠が成立しない場合は、早めに不妊専門クリニックへ行き、ふたりで検査を受け、その後の妊活を考えましょう。

5.精子は?

ふたりで妊活をはじめる場合、妊娠を難しくしている原因を調べることはあまりありません。でも、精子が少なかったり、動いている精子が少なかったり、また精子がいなければ性生活による妊娠は難しいかもしれません。
今は、スマートフォンなどで簡易的にテストできるキットもありますので、一度は確認をしてみましょう。

6.風しん抗体はある?

妊娠初期に妊婦が風しんに罹ると90%の確率で胎児にも感染する(WHO Fact sheetsより)ことがわかっています。流産や生まれてくる赤ちゃんが先天性風しん症候群(CRS)を発症する可能性が高まり、発症すると先天的に目や耳、心臓などに病気を持って赤ちゃんが生まれてくることがあります。

そのため、妊娠前にふたりが風しんの予防接種を2回受けているか、または風しんに罹ったことがあるかなどを調べることが重要です。曖昧な場合は、医療機関で抗体検査を受け、必要な場合は風しんの予防接種を受けましょう。

これは、同居家族やよく訪問する親族なども同じです。家族全員で生まれてくる赤ちゃんを守りましょう。

7.葉酸は足りている?

妊娠が成立すると、赤ちゃんはさまざまな器官や臓器をつくって発育、発達していきます。妊娠6週頃には脳や脊髄などのもととなる神経管をつくり始めますが、このとき葉酸が不足、欠乏すると赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクが高まり、無脳症や二分脊椎などの疾患を招きます。

「妊娠初期に不足しないようにするなら、妊娠がわかってからでも遅くないのでは?」と思うかもしれませんが、妊娠がわかるのは妊娠4〜5週。これでは遅いのです。

遅くとも妊娠1ヵ月以上前から食事から摂取する葉酸(ポリグルタミン酸型)240μgを摂取することに加えて、吸収されやすいサプリメント(モノグルタミン酸型)で400μgを摂取することが推奨されています。

妊娠適齢期の女性の葉酸摂取量(中央値)は、20代213μg、30代224μgと不足しているという発表があります(令和元年国民健康・栄養調査)。

8.プランを立てましょう!

妊娠は、赤ちゃんを授かるための大きな通過目標で、目的ではありません。
妊娠は出産へ続き、出産から育児が始まります。育児は、その子が1人で生活していけるように、幸せになるようにと養い、守り、教育していくことで、長く、長く続いていくことなのです。

妊娠や出産に関するライフプランは、「何歳で産むか」、「何歳までに何人産みたいか」から考えてプランを立ててみましょう。
そこから逆算しながら、今からどう妊活を進めていくと良いかが見えてくるでしょう。

不妊とは?

性生活では妊娠が難しいことを不妊といい、不妊症の定義は、「避妊しない性生活を1年以上送っても妊娠が成立しないこと」と日本産科婦人科学会で発表しています。

妊娠のプロセスに問題のないカップルは、1年ほど性生活を送れば80%以上のカップルが妊娠するといわれています。

ただ、女性の年齢が上がると卵子の質の低下から妊娠率は低下していきます。
1年間避妊しない性生活をした場合の年代別妊娠率は、20代は約80%ですが、30代になると妊娠率は低下し30代前半では約60%、30代後半では約50%、40代前半では約35%になるという報告もあります。

このようなことから、30代後半からの妊活期間は約半年を目安にしたほうがいいでしょう。
半年、または1年が過ぎても妊娠成立しない場合は、なんらかの治療をしないと妊娠が難しい可能性がありますので、一度、カップル揃って検査を受けることをお勧めします。

1年間避妊しないで性生活をした場合の年代別妊娠確率

1年間避妊しないで性生活をした場合の年代別妊娠確率

M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition

赤ちゃんが欲しいと思ってから「あれ?妊娠しないな…」と思うまでの期間は、人それぞれです。

すぐに妊娠できると思ったという人は、数カ月でそう思うかもしれませんし、中には数年経ってから思う人もいるかもしれません。

不妊治療をする、しないは別として、まずはブライダルチェックや妊活ドックなどを受けて妊活にチャレンジするのもいいでしょう。

ブライダルチェックや妊活ドック

ブライダルチェックは結婚前に行う検査と考えがちですが、結婚後であっても妊娠・出産を考えている行うカップルの健康診断です。最近では、妊活ドックといわれることもあります。

女性は感染症(B型肝炎・C型肝炎・梅毒・HIV)やクラミジアなどの性感染症、ホルモン値、AMH検査など、男性は感染症(B型肝炎・C型肝炎・梅毒・HIV)やクラミジアなどの性感染症、精液検査、性機能に関することなどを検査します。これら健康診断には、保険は適用されません。

プレメントシリンジを続ける? 続けない?

プレメントシリンジでの妊活は、4周期を目処にしてお勧めしています。

月経血が治ったくらいから2日に1回を目安にして、月経20日くらいまで性生活を持つようにすると排卵を逃すことなくタイミングを取ることができるでしょう。その期間、毎回、プレメントシリンジをご利用いただいてもいいですし、性生活と併用していただいてもOKです。

4周期で妊娠が叶わなかった場合、ブライダルチェックや妊活ドックを一度受けてみましょう。プレメントシリンジを利用する前から妊活をしていた場合は、一度、不妊治療専門の治療施設で検査を受けることをお勧めします。その結果から、今後の妊活方法を考えましょう。

不妊の原因と検査

不妊原因には、卵管の問題、排卵の問題、子宮の問題、精子の問題、年齢の問題などがありますが、複数の原因が絡み合っていたり、中には原因がよくわからなかったりすることもあります。

卵管の問題

卵管に詰まっている箇所や狭くなっている箇所があることで、精子が卵管膨大部に辿り着けない、また受精した胚が子宮へ運ばれないなどが起こります。

そのほかに卵子をピックアップする卵管采が閉じている、癒着しているなどで卵子がピックアップされない場合もあります。

排卵の問題

卵胞が順調に発育しない、卵胞が発育しても卵巣から排出されないなどがあります。

子宮の問題

子宮筋腫や子宮腺筋症などの病気が着床を妨げていたり、中隔子宮などの形態異常があったりすると着床が難しくなる、または流産の要因になることがあります。

そのほか、最近ではビタミンD不足や子宮内フローラの問題から着床が難しくなることがわかってきました。

精子の問題

精子の数、運動する精子の数が少なかったり、奇形精子が多かったりするなどの場合は性生活での妊娠が難しいことがあります。

そのほかでは、精液が膀胱へ逆行してしまうケース、性生活で腟内射精ができない、勃起しない、または勃起が続かないなどの性機能に原因があるケースも増えています。

年齢の問題

女性は、年齢が高くなるに従って起こる卵子の質的低下が原因となって妊娠が難しくなることが知られています。

男性も、年齢が高くなると精子の質の低下し、妊娠が難しくなります。

原因不明

ひと通りの検査をしても問題が見つからない場合を機能性不妊(原因不明不妊)といいます。

妊娠のプロセスは、とても複雑で検査ができないところに不妊原因があって性生活で妊娠できないことが考えられます。たとえば卵管采の機能、卵子の質や精子の質などは一般的な検査では問題の有無はわかりません。

赤ちゃんを授かるための検査

女性の検査は、月経周期に沿って行われます。卵胞期、排卵期、黄体期、それぞれのホルモンの分泌に変化があるため、それぞれの期間のホルモン値と順調に変化しているか、これに合わせて卵胞期初期の胞状卵胞(排卵周期に入った卵胞)の数、卵胞の発育状態、子宮内膜の厚さなどをエコー検査で調べます。

その他、卵管通過検査(造影剤や生理食塩水など)で、卵管の詰まりの有無などを調べます。月経周期に沿って行われるので、ひと通りの検査が終わるのに1〜2ヵ月ほどかかります。

男性の検査は、精液検査が主になります。精液の全量と精子の数や運動する精子の数、形に異常のある精子の数などを調べます。検査結果があまりよくなかった場合は、一度の結果で決めてしまわず、何度か行い、その結果の平均値や中央値から判断をします。何度精液検査をしても精子の数が極端に少ないなどの場合は、男性不妊治療の専門医へ受診し、更に詳しい検査を受けましょう。

検査は男女それぞれにありますが、カップルのどちらかに原因があるのかではなく、妊娠のプロセスのどこに原因があるかを調べるために行います。

夫に、または妻に原因がある「せい」で、赤ちゃんが授からない、または治療しなければならないのではなく、ふたりの問題として考えましょう。

検査
周期

月経周期:1周期25~38日くらい 4つの時期がある

  • 月経期:子宮内膜が剥がれて体外に排出される時期
  • 卵胞期:卵胞が育ち、子宮内膜が厚くなる時期
  • 排卵期:卵胞が成熟し、卵子が排卵される時期
  • 黄体期:子宮内膜が着床しやすい環境に整えられる時期

検査で何がわかるの? 何のためにするの?

「不妊検査」といわれるので、検査を受けたら「不妊かどうか」がわかると考えがちですが、そうとは限りません。逆に「妊娠できるかどうか」を知ることも難しいです。

検査は、妊娠のプロセスの全てを調べることができないため、たとえ検査の結果「問題なし」となっても、自然妊娠ができるという保証にはなりません。

あくまでも「行った検査の結果に対して問題はなかった」だけで、実際には「妊娠成立しない期間が一定期間(1年以上、または半年)ある」場合は、検査では明らかにならない箇所になんらかの問題があると考えたほうが妥当です。

また、検査で問題が見つかり、それに適応する治療を行っても、必ず妊娠できるとは限りません。なぜなら、妊娠のプロセスは大変複雑で、検査では明らかにならない箇所にも問題があるかもしれないからです。

検査をしてもわからないのは、卵子や精子の質、胚の質、卵管采の状態や機能、受精や胚発育の状況と状態、着床の様子などです。体外受精をすることでわかることもありますが、それでもわからないことはあるのが現状です。

では、「検査は何のためにするの?」と思われるかもしれません。

検査で問題が見つかれば、それに適応した治療からスタートさせることができます。

検査で問題が見つからない場合は、ふたりで行ってきた妊活期間から、治療をする、しないを考えましょう。

検査は、不妊の原因がわかる、わからないも大切ですが、ふたりが今後、赤ちゃんを授かるために、どの方法がいいのかを選択する、また考えるきっかけになるでしょう。

検査で問題なしに安心してはいけないワケ

ひと通り検査を受けて「問題なし」という結果が出たら、安心していいのか?良くないのか?といえば、避妊しない性生活を1年、または半年以上送っているカップルは、「検査に問題がなくてよかった!」ではなく「では、なぜ妊娠しない?」と考えてみることも大切です。

たとえば、基礎体温をつけ、市販の排卵日検査薬を使っての性生活を1年以上送っているのであれば、1年以上の間、排卵日を外し続けているとは考えにくいとは思いませんか。

妊娠して赤ちゃんを授かるためには、排卵日と性生活のタイミングを合わせる方法では、妊娠は難しいのかもしれません。

検査で問題がないのは、「妊娠するプロセスに何も問題はない」ということではないかもしれません。

妊娠のプロセス わかること わからないこと
1.卵子が排卵される 卵胞の発育(ホルモン分泌)
排卵の有無(ホルモン分泌)
卵子の質
2.子宮内膜が厚くなる 内膜の厚さの計測 子宮内環境
3.精子が腟内に射精される 精子の数、運動精子の数など 精子の質
4.精子が腟から子宮、卵管へ上がって行く 子宮頸管粘液内の生きている精子の数 精子が泳ぎ上がっているか
5.排卵された卵子が卵管に入る 卵子がピックアップされる
6.卵子と精子が受精する 受精が起こる
7.胚が発育する 発育の状態
胚が正常かどうか
8.着床環境の状態 ホルモン環境
内膜の厚さ
子宮内環境
9.胚が着床する hCGホルモン、尿検査 実際の様子はわからない

検査の費用

ブライダルチェックや、不妊治療を望んだ初診検査には、保険が適用されない検査があります。
治療施設によって違いがありますが、1万〜3万円かかることもあります。

ただ、不妊検査にかかる費用の一部を助成する制度を設けている自治体もありますので、住民票のある自治体のサイトや広報誌などで一度確認してみましょう。