COLUMN

妊娠の基礎知識(妊娠と年齢)

妊活の基礎知識(妊娠と年齢)

妊娠と年齢

妊娠適齢期とは?

初経からの順調な排卵が起こる月経周期になるまでには数年かかります。初経年齢には個人差もあり、また排卵や月経周期にも個人差がありますが、20代になれば順調な排卵を伴う月経が起こり月経周期も安定してくるでしょう。

そのため妊娠適齢期は、一般的に20代から30代前半といわれています。

日本生殖医学会では、月経周期が安定してくること、産道(分娩時の児の通り道)の組織の弾力性、生活習慣病などの年齢に伴う全身性の疾患、また子宮筋腫や子宮内膜症などの頻度などから、妊娠・分娩に最適な年齢は20代で、遅くとも30代半ばまでに第1子を出産するのが望ましいとしています(日本生殖医学会:生殖医療Q&A)。

カップルの年齢が上がると、妊娠が難しくなっていきます。
それは、卵子の質の低下、精子の質の低下、また子宮筋腫や子宮内膜症などが起こりやすくなるからです。 「自然妊娠の妊娠率は、25〜30%」といわれますが、それは20代〜30代前半までのことで、それ以降、妊娠率は低下していきます。

1年間避妊しないで性生活をした場合の年代別妊娠確率

1年間避妊しないで性生活をした場合の年代別妊娠確率

M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition

1周期当たりの妊娠率

1周期当たりの妊娠率

M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition

卵子の数と質。そして、精子の質

女性は、一生分の卵子を卵巣に蓄えて生まれてきます。その数は約200万個で、閉経になるまで400〜450個を排卵するとされています。
出生後に卵子が増えることはなく、逆に消えてなくなってしまう卵胞のほうが多くあります。これを閉鎖卵胞といいます。閉鎖卵胞は、いわゆる機能が停止してしまった卵胞で、その後は身体に吸収されてしまうため、自然に減少していきます。

それは、大人になってピルで月経を止めていても起こることで、誰にも止めようがありません。
生まれた時には約200万個、初経の起こる思春期頃には20〜30万個、20代で10万個、30代で2~3万個、閉経頃には1000個程度になっているといわれます。

また、現在、卵巣に残っている卵子の数はAMH検査をすることで、おおよそがわかります。
では、質は? というと、卵子は年齢を重ねます。そのため、老化現象も起こります。それが染色体の数の問題などにあらわれます。

精子は、精巣でつくられます。精巣には精子の元となる細胞があり、これが数を増やすことができるので、一生つくりつづけることができます。しかし、年齢が高くなれば、精子をつくる力が衰え、また質が低下してくることもわかっています。

卵子の数のこと

なぜ、卵子の数は増えないの?

卵子は、数を増やすことができません。
なぜなら、原始卵胞は第一減数分裂の途中で眠りについてしまっているからです。

減数分裂は卵子や精子だけにある細胞分裂で、染色体の数を半分に減らす細胞分裂のことをいい、2回起こります。ヒトの染色体数は46本で、卵子や精子も元は46本の染色体を持っています。しかし、このまま出会い、受精してしまうと染色体数は92本になってしまいます。これでは、人になりません。

そのため、それぞれ染色体の数を半分の23本に減らして出会い、受精して、基本的には人となる46本の染色体数を持って生まれてきます。
原始卵胞は、23本に減らそうとしている1回目の減数分裂の途中で眠っています。だから、もう数を増やすことはできないのです。

閉経は、卵巣に卵子がなくなること

閉経の平均年齢は、約50歳です。この頃、卵巣に残された卵子は約1000個といわれています。
閉経が起こる10年ほど前の40歳を過ぎる頃からホルモン環境もだいぶ変化し、排卵の伴わない月経が起こることが増えてきます。

脳の下垂体が卵子を育てようとしてFSH(卵胞刺激ホルモン)で刺激をしても、卵巣も疲れていて反応が鈍くなります。反応が鈍いので、下垂体はFSHを分泌し続けますが、それでも卵子はなかなか育ってきません。

こうした周期が、40歳を過ぎる頃から増えてきます。中には、卵巣に残された卵子が少なくなっていること、卵巣の反応が鈍くなることなどから月経周期が短くなってくる人もいます。こうした周期を重ねて、いよいよ卵子が残り1000個くらいになると、卵巣は反応せず卵子は育ってきません。この頃には、月経周期が間遠くなっていることでしょう。

だいたい1年ほど月経が起こらなくなったら閉経です。
また、更年期とは閉経時期を挟んだ約10年間(一般的に45〜55歳頃)のことをいい、さまざまな不定愁訴(身体や心に現れる不快感や違和感)が現れる人もいます。

卵子の質のこと

私と卵子は同い年

卵子は特殊な細胞で、原始卵胞という袋の中に入って眠っていて、そのままの状態で何年も何十年も生きることができます。 生まれた時の卵巣にあるのは1歳の卵子です。でも、眠っています。

思春期頃、目覚めて初経が起こります。もし13歳で初経が起こったなら、卵巣の中の卵子も13歳になっています。20歳頃、排卵を伴う月経が起こるようになると、排卵された卵子も同い年です。

30歳、40歳と、あなたと一緒に年齢を重ねて、閉経まで一緒に年齢を重ねます。
あなたに老化現象が起こるように、卵子にも起こります。いくら外見が若く、肌も髪もハリがあって艶やかでも、卵子が同じとはいえません。卵子は、正直に年齢を重ねると考えたほうがいいでしょう。

卵子の質とは?

卵子は、正直に年齢を重ねてきたとはいえ、実際には個人差もあります。
では、卵子の質とはなにか? といえば、それは染色体の数の問題が大きくあります。

卵子は、もともと染色体の数に問題が起こりやすい細胞で、排卵された卵子の約25%に起こっているといわれていますが、この確率が年齢とともに上昇します。正常であれば卵子の染色体の数は23本ですが、減数分裂の時に半分にできず24本になったり、22本になったりすることがあります。この卵子が精子と出会っても、染色体の数の問題は引き継がれ染色体の数が47本や45本となり、胚が発育しない、着床しない、流産になるなどが起こりやすくなり、妊娠が難しく、流産しやすくなってきます。

また、加齢によって卵子のミトコンドリアの数が少なくなることも要因になっているといわれています。
ミトコンドリアは、細胞のエネルギーをつくりますが、この数が少なくなること、または異常が起こることで卵子のエネルギー不足や染色体の数の問題などが起こると考えられています。

精子のこと

精子とは

精子は、ヒトの身体のなかで一番小さな細胞です。ちなみに一番大きな細胞は卵子です。
精子は、とても特殊な細胞で、持ち主の身体を離れて、自分で動くことができます。

女性の腟内に射精された精子は、卵子と受精するために子宮頸管粘液を抜け、子宮内腔を上がり、どちらかの卵管へ入って卵子と受精する場となる卵管膨大部まで泳ぎ、卵子と出会えたら受精するために果敢にアタックするわけです。

1回の射精精液中には2億〜3億個の精子がいるといわれますが、実際に卵子にたどり着くことができるのは100個ほどだといわれています。
精子は、ヒトとなる遺伝子の半分を持って卵子に届けるために泳ぎます。

効率良く届けるために、また自分が受精する精子になるために最低限必要なものだけを持った細胞といわれています。精子の構造は、頭部、中片部、尾部にわかれていて、頭部には遺伝子(DNA)があり、中片部にはミトコンドリアがありエネルギーをつくって尾部を動かしています。

精子の構造

精巣と精子

男性は、精巣に精祖細胞を蓄えて生まれてきます。精祖細胞も、思春期頃に精通が起こるようになるまでは眠っていますが、蓄えているものが精祖細胞であることが卵子との大きな違いです。
精祖細胞は精子になる大元の細胞で、分裂を繰り返すことで精祖細胞がなくなることはありません。

卵巣は卵子の貯蔵庫といえますが、精巣は精子の工場です。基本的に精祖細胞はなくなることはないので、毎日、毎日つくられます。射精された精子は、生まれたての0歳で、年齢を重ねることもありません。

しかし、精子をつくる力は年齢が高くなると衰えてきますので、1回に射精される精子の数は、年齢に従って減少する傾向があります。卵子1個に対して、数億の精子が膣内に放たれますが、それはほとんどが卵子にたどり着く前に死んでしまうからですが、特に自然妊娠、一般不妊治療では精子の数は重要です。

では、精子の質はどうか? といえば、これも個人差はありますが、35歳くらいから低下する人が増えてきます。
精子は、とても活性酸素に弱い細胞です。老化は、活性酸素などが原因で起こることから、年齢を重ねることで精子の質の問題が起こりやすくなるとされています。

この精子の質には、DNAの問題があげられます。精子は、頭部にあるDNAに傷があっても修復することができません。そのため、DNAに傷のある精子と卵子が受精した場合、この傷は卵子が修復して受精が完了し、胚が発育していきます。

しかし、精子のDNAに傷が多い、または大きい場合、卵子が修復しきれず、受精が完了しない、または胚が発育できない、着床できない、流産になるなどの可能性が指摘されています。
精子のDNAに傷があっても、卵管膨大部までたどり着く精子であれば卵子と受精することは可能です。
活性酸素が問題となるため、活性酸素に負けない日頃の身体づくりが重要になってきます。

精子力を高める7ヵ条

1.禁煙する!

タバコは、精子の数や運動性のある精子が減ってしまいます。
また、酸化ストレスから精子のDNAに傷ができやすくなることも知られています。そのほか血管の収縮により血流に問題が起こりED(勃起不全)になる心配も!
自分で吸うのも、副流煙もいけません。パートナーのために、生まれてくる赤ちゃんのためにも禁煙しましょう!

2.禁欲しない!

射精しない日が続くと、精巣に精子がたまります。その中には死んでしまう精子もいて、その精子が活性酸素を生み、ほかの精子のDNAに傷をつくるきっかけになってしまいます。
禁欲をせず、心の赴くままに出しましょう!

3.ぴったり下着やズボンは避ける!

精巣は熱に弱いため、身体の外にぶら下がるようにしてあります。精巣温度が上がると精子をつくる力が低下することがわかっています。風通しよく、熱がこもらないように下着はブリーフなど、またスキニーパンツなども避けましょう。

4.サウナや高温風呂、長湯は控える!

2回目です!精巣は、熱に弱いので、サウナや高温のお風呂であたため過ぎないようにしましょう。冬は、寒いのでゆっくり浸かりたいところですが、長湯はほどほどに。

5.膝の上でPCを操作しない!

3回目です!膝の上でパソコンを操作すると、その熱で精巣をあたためてしまうことも…。 テーブルや机のない場所でパソコンを使わなければならないときは、長時間にならないように注意しましょう。

6.自転車に乗りすぎない!

自転車のサドルが精巣にあたることで血流が悪くなることでEDや精子の数の減少、運動率の低下が心配されます。自転車に乗る時は、時々プッシュアップをする、十分に休むなどし、長時間にならないよう気をつけましょう。

7.育毛剤は気をつけて!ハゲでも、薄くても気にしない!

AGA(男性型脱毛症)の薬の中には、男性ホルモンの作用を抑えるものがあります。髪の毛は生えるけれど、男性ホルモンがブロックされ、それが精子をつくる力に影響してしまいます。
妊活中は、ハゲでも薄毛でも気にし過ぎないように!