妊娠の成立
2024.09.30
妊娠するまでの4つのクリアポイント
妊娠は、射精、排卵、受精、着床というおおまかな流れで進みます。
「射精」→「排卵」→「受精」→「着床」
すべてが順調に起こると妊娠が成立します。
射精
性生活によって、女性の腟内に射精された精液には粘り気がありますが、30分ほどするとサラサラになり、精子が活発に動き、泳ぎだします。
射精精液中の精子の中には、死んでいるものもいれば、奇形精子も多く、これらには受精能力はありません。また、泳げるようになっても子宮頚管粘液に絡みついたり、フローバックで腟外へ出されたりするものもあります。
排卵期に女性の腟内に放たれた精子は、子宮頚管粘液を潜り抜け、子宮へと上がり、子宮の壁を伝うようにして卵管を目指します。
精子の泳ぐ距離は、子宮内腔から卵管膨大部までの約18センチ。そのスピードは1分間に約5〜6ミリで、射精後1時間〜1時間半程で卵管膨大部に到達します。
中には15分程で到達するものもいるといわれていますが、この間にも力尽きて死んでいく精子が多く、卵管膨大部に到達するのは1000個程度といわれています。
排卵期以外、精子はどうなるの?
子宮頚管粘液は、腟の奥、子宮の入り口付近にあります。普段は酸性で、細菌やウイルスなどが子宮へ侵入しないように守っています。そのため、精子も子宮へ上がっていくことはできません。
しかし、排卵期近くになると子宮頚管粘液が増え、酸性からアルカリ性に傾くことで精子が生きやすい環境に変化します。
排卵・受精・着床
女性の月経周期は、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期に分けられ、28〜35日周期が正常範囲とされています。月経周期始めには、約5mmに成長した10数個から20個ほどの卵胞がエントリーされ、月経周期中に起こるホルモン変化の影響を受けて成長します。
月経期
月経周期の始まりは、出血が始まった日が1日目です。
脳の下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)によって、卵が成長していきます。
卵胞期
10数個の卵胞のうち、一番大きくて、一番ホルモンに対して反応の良かった1個の卵胞が成長を続け、他は成長を止め、退縮し、やがて体に吸収されます。
この1個が成長するに従って卵胞を取り巻く顆粒膜細胞から分泌されるホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)の量が増えてきます。エストロゲンは、子宮内膜へ作用し、子宮内膜は厚みを帯びてきます。十分に成長し、エストロゲン量も十分になると視床下部に「卵胞が十分に育った」とフィードバックします。
排卵期〜受精
フィードバックを受けた視床下部は、下垂体にFSHの分泌を弱め、LH(黄体化ホルモン)を大量に分泌するよう命令します。これをLHサージといいます。
このLHによって、卵胞は成熟し、卵子が排卵されます。一般的に、LHサージの32〜36時間後に排卵が起こるといわれています。
また、排卵間近になると卵管采(卵管の先端部分でイソギンチャクのような形をしている)は卵巣を覆うように移動して卵子をピックアップするといわれています。卵管内に取り込まれた卵子は、卵管膨大部(卵管の奥の広い場所)で精子と出会います。
卵子が卵管膨大部に到着すると、精子は卵子に群がるようにして受精に挑みます。
このとき、卵子にくっつくことができる精子は数100個で、それぞれが卵子の透明帯を溶かそうと頭部から酵素を出します。多くの精子の酵素により、だんだん透明帯が弱くなり、そこに1個の精子が頭を入れ、卵子の細胞質内に進入し、受精していきます。1個の精子が卵子の透明帯を抜けると、透明体の性状が変化して硬くなり、他の精子が入ってこられないようになります。
黄体期〜着床
卵巣に残された卵胞は、黄体化しプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌するようになります。
このプロゲステロンは、厚くなった子宮内膜を着床しやすい環境に整えます。
この頃、卵子と精子は受精が完了し、卵管から子宮へ運ばれながら胚は発育していきます。
胚は、受精からだいたい5日ほどで胚盤胞に成長し、子宮へ到達します。
胚は、透明帯から脱出して、子宮内膜へくっつき、潜り込むようにして着床していきます。
胚が潜り込んだ際にできる痕も修復し、内膜へ完全に潜り込んだら着床は完了です。
着床が完了すると、胎盤がつくられ始めます。胎盤をつくるのは、胚の仕事です。
胎盤をつくるために盛んに分泌されるのがhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)です。
hCGが母体血や母体尿に検出されるようになると妊娠判定ができます。
市販の尿検査薬で陽性になっても妊娠が成立したわけではなく、これを生化学的妊娠といいます。
生化学的妊娠後、月経が訪れることがありますが、これは医学的には流産ではありません。
妊娠反応が陽性になった後、妊娠5週くらいになると子宮内に胎嚢(赤ちゃんが入った袋)がエコー検査で確認できるようになると妊娠成立です。これを臨床的妊娠といいます。
その後、妊娠6週頃になるとエコー検査で胎児の心拍が確認できるようになります。
卵子と精子の出会う良いタイミングは?
受精確率には、それぞれの寿命の違いが関係しています。精子の寿命は約3日で、卵子の寿命は約24時間といわれています。
排卵後に精子が到達するのでは、卵子は待ちぼうけになるかもしれません。
受精に良いタイミングは、排卵されてくる卵子を卵管膨大部で精子が待ち構えること。
排卵の2日前の性生活の臨床的妊娠率が高かったという報告もあります。
Human Reproduction Vol.17, No.5 pp.1399-1403, 2002
この1個の卵胞を主席卵胞と呼ぶこともありますが、質が良いものとは限りません。実は、その周期に一番大きくて、一番ホルモンに対して反応の良かった卵胞で、この卵胞の質の良し悪しは別な問題なのです。
卵子は染色体の数に問題の起こりやすく、排卵した約25%に染色体の数の問題があるといわれています。つまり、4回に1回は。1年間で12回排卵するとしたら、3回は染色体に問題があるという確率です。この確率は、年齢が上がるとともに上昇します。