COLUMN

妊活と不妊治療(体外受精の成績)

2024.10.31

妊活と不妊治療(体外受精の成績)

あなたの妊娠率は、どれくらいか。

自然妊娠の妊娠率は、一般的に約25〜30%と紹介されていることが多くあります。
しかし、これは何歳でもというわけではありません。
カップルの年齢が上がれば妊娠率は低下し、それには女性の年齢が大きく関係しています。

1周期当たりの妊娠率

1周期当たりの妊娠率

M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition

1年間避妊しないで性生活をした場合の年代別妊娠確率

1年間避妊しないで性生活をした場合の年代別妊娠確率

M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition

1周期(1回の排卵)あたりの妊娠率と1年間避妊しない性生活での妊娠率なので、「避妊しないで妊娠できる条件が揃っているカップル」ということになります。

何か問題があれば妊娠は難しくなるので、何かしらの要因や原因を持っているカップルは含まれていないと考えていいでしょう。

その「妊娠が難しくなる要因や原因」に年齢が大きく関係していることがこれらの表やグラフからもわかります。
また、女性の年齢が高くなると妊娠するまでに時間がかかるようになります。

一方、男性には変化がありません。ただし、最近では男性も年齢が高くなると生死の質が低下することがわかってきていますので、妊娠率の低下や流産率の上昇などの心配が高くなるといわれています。

年齢別妊娠までに要した時間

M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition

性生活から妊娠する(妊活で妊娠する)ためには、妊娠するプロセスに問題がないことが前提になります。妊娠のプロセスに何らかの問題があれば、性生活での妊娠は難しくなります。

不妊治療での妊娠率は、どれくらいか。

タイミング療法や人工授精などの一般不妊治療の妊娠率は?

妊娠のプロセスに何らかの問題があり不妊治療を必要とするカップルの場合、その原因に適した治療を行って妊娠を目指します。

タイミング療法は、自然妊娠と同じような妊娠率と考えていいでしょう。
人工授精の妊娠率は、一般的に約8〜15%といわれています。また人工授精で妊娠成立するカップルの多くは治療3周期以内で約5周期以上からは妊娠数は微増だったという統計もあることから治療周期を5〜6周期を目処にし、人工授精では妊娠できない原因があるのだろうと考え、治療を体外受精に切り替えるケースが多くなります。
そのほか人工授精も年齢が関係してくるので、年齢を重ねるごとに妊娠率も低下していきます。

年齢別AIH施行回数と累積妊娠率(%)

M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition

体外受精の妊娠率は?

体外受精の妊娠率などについては、毎年、日本産科婦人科学会が公表しています。
年齢別妊娠率、生産率(生きた赤ちゃんが生まれてくる確率)、流産率を見ると、女性の年齢が35歳以上から妊娠率が低下しているのがわかります。また38歳になると妊娠率と流産率が逆転し、それ以降は流産率が上がっているのがわかります。

体外受精を行っても年齢の壁は越えられないことがわかりますが、何か問題があって性生活や一般不妊治療では妊娠が難しいのであれば、早めに体外受精に治療を切り替えて妊娠を目指したほうがいいかもしれません。

ART妊娠率・生産率・流産率2021

ART妊娠率・生産率・流産率2021

日本産科婦人科学会ARTデータ2021 妊娠率は目安に!

性生活で、一般不妊治療で、または体外受精での妊娠率は、1つの目安です。
たとえば、妊娠率20%だった場合、100人のうち20人が妊娠するという確率なのか、4回中1回妊娠するという確率なのか、または1回のトライで20%妊娠するという確率なのか、その捉え方によっては違いがあります。

100人中20人だったら、80人は妊娠しません。4回中1回だったら可能性が見えてきます。1回で20%だったら80%の確率で妊娠しないということになり、ビクビクしてしまうでしょう。
また、それぞれの病院で発表されている妊娠率は、独自のものだと考えましょう。一概に病院間の妊娠率を比べることはできません。

たとえば、患者さんの平均年齢が40歳のAクリニックと平均年齢35歳のBクリニックの妊娠率では、一般的に考えて平均年齢が若いBクリニックのほうが成績は良くなります。

また、平均年齢が同じでも妊娠を妊娠判定陽性(生化学的妊娠)から計算されているCクリニックと胎嚢が確認(臨床的妊娠)されてから計算されているDクリニックでは、一般的に考えて生化学的妊娠を含めたCクリニックのほうが成績は良くなります。

このように分母や分子の要素に違いがあり、いずれの病院も同じ条件で妊娠率を出しているわけではありません。そのため比べるのではなく、それぞれの病院の妊娠率として見て、参考にしましょう。